『主役 七海の元恋人役を演じるのは、ミュージシャンの

 不破 尚さんです』


その言葉に

私も敦賀さんも凍りつく

スポットライトが当たり

前方の扉が開く

スモークの中から

現れたショータロウは

不敵な笑みをこぼしながら

真っ直ぐと私の方を向いていた

ワンピースのすそをぐっと掴む


どうして?この役をあいつがするの?

顔面蒼白の私に気づいたのか

テーブルの下

そっと私のこわばる手の上に手が触れる

『最上さん・・・・大丈夫俺がいるよ?』

その小さな声とともに

凍りついていた私の体は

敦賀さんの手が触れる部分から

溶けはじめていた

ただ触れられていた手は

敦賀さんによってしっかり繋がれる

『ね?』

その言葉に笑みがこぼれる


大丈夫・・・・私には敦賀さんがいる

何故かそう思えた


ショータローは私たちの前に来ると

軽く会釈し私の横に用意された椅子に座る


「こんばんは。

 今回、七海の元恋人役のミュージシャンRYOを

 演じることになりました不破 尚です。

 よろしくお願いします」

そう挨拶すると

ショータロウは私の方を見て

ニヤっと笑った


「では順番に質問させていただきます

 お二人にもRYO役は秘密だったそうですが

 不破さんと共演するとわかりどんなお気持ちですか」


「はい。

 不破くんの曲は時々に聞かせてもらっていて

 素晴らしいミュージシャンだなと思ってましたので

 その方と共演できるなんて光栄です。

 それに、京子さんが出演されているプロモーションビデオでも

 いい演技してましたし期待しています」


そう

偽りの紳士スマイルで敦賀さんは

感想を述べた


「では、京子さんは?」

そう言われた瞬間

体がビクッと反応する

それをなだめるかのように

敦賀さんは強く私の手を握り

言葉はなくても『大丈夫だよ』と言われているように思えた


「はい。

 不破さんとは2度目の共演となりますが

 前回のお仕事のとき、本当にミュージシャンなのかしら?

 と思うぐらい演技だったので私も負けないように頑張りたいです」

そう言うと

敦賀さんは私の方を見て

優しく微笑んだ
















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